【モデル崩壊とSEO】AIが自分の「言葉」を食べて自滅する日
「SEO対策のためにコラム記事を書いているのに、アクセスが増えない」
「まわりのみんなも生成AI使っているし、そもそも記事を書く意味があるのかわからなくなった」
そう感じているWeb担当者の方も少なくないはずです。
たしかに、生成AIの普及によって「SEOは終わった」という声を耳にすることも多くなりました。私自身、これまで検索で調べていたことの多くを、生成AIで代替するようになりました。
しかし、本当にSEOはもう終わったのでしょうか?
私は、SEOが終わったとは考えていません。
その理由を理解するためには、「モデル崩壊(Model Collapse)」というキーワードを知っておく必要があります。それでは、AIという未知の頭脳について、一緒に考えてみましょう。
この記事を読めば、モデル崩壊とSEOについて理解し、企業が今後どう情報発信と向き合うべきかを学ぶことができます。
目次
「SEOはもう終わった」という声

生成AIやAI検索の普及によって、「SEOはもう終わった」という声を聞くことが多くなりました。
しかし、これは単なる悲観的な意見ではなく、根拠にもとづく主張です。
例えば、米国のSeer Interactive社の『AIO Impact on Google CTR: September 2025 Update』という記事には、生成AIの普及によって、「情報系・学習系」キーワードのCTRが大幅に低下したというデータが掲載されています。
Organic CTRs for informational queries with AIOs are down 61%. Paid CTRs crashed 65%. Even queries without AIOs are seeing 25-41% declines.
上記内容によると、AIによる概要が表示される情報収集目的のキーワードについては、CTRが61%低下、有料検索(リスティング広告)についても、65%低下したとのことです。
また、AIによる概要が表示されないキーワードも、25-41%のCTR低下が見られたとのことです。
あなたや、あなたの周りの人たちはどうでしょうか?
検索よりも生成AIを使う場面が増えていませんか?
イノベーションの一つの方法は、手間を省くことです。人間は本来めんどくさがりなので、より楽できる道があれば、そちらに流れます。
考えてみたらわかりますが、検索とはめんどくさいものです。検索結果から比較しないといけないし、場合によっては言葉を選び直して再検索が必要です。
その手間を全て省いてくれるのが、ChatGPTのような存在です。それに、生成AIは、利用者の利用時間(依存率)を高めるために、FacebookやTikTokなどと同じような行動経済学モデルをアプリに適用しています。
あなたも普段使っている中で、「ChatGPT(やGeminiなど)は自分のことをわかってくれる(肯定してくれる)と感じたことはないでしょうか?
これは心理学や行動経済学の考え方を、アプリが取り入れてるためです。
その結果、検索からAIへとユーザーは流れていきます。
ただし、それだけで「SEOは終わった」と結論づけるのは早計です。
AIに餌を与えるのは誰なのか?

AIは情報を食べる怪物のようなものだとイメージしてみてください。
未来がどうなるかはわかりませんが、今のところ、生成AIの学習データの大部分が、インターネット上で人間が発信した情報です。
私たちは、知らぬ間に、AIという怪物に餌を与えていたのです。
ミドリガメは、生まれたばかりの頃は小さくておとなしいですが、成長すると30cm近くにまでなり、気性が荒くなるそうです。
一度与えた餌は、ずっと与え続けなければならない。
これが生みの親(育ての親)の責任です。
例えば、Googleは世界最大の検索ネットワークを持つ会社です。つまり、餌場を提供する企業です。
その、餌場を提供する企業であるGoogle自身が、Geminiや、「AI Overviews」によってオーガニック検索のトラフィックを減らしています。
もしもオーガニックトラフィックの大半が、生成AIチャットや「AI Overviews(AIによる概要)」により完結するようになれば、記事を書く意味は失われます。
記事を書く人がいなくなれば、検索を利用する人はいなくなり、検索を利用する人がいなくなれば、広告主がいなくなります。結果的に、Googleは膨大な広告費収入を失うことになります。
それなのにGoogleはなぜ、自分の首を絞めるようなことをするのでしょうか?
世界最高峰の頭脳集団であるGoogleのような企業が、なぜそんなことをするのでしょうか?
明確な答えは分かりませんが、Googleがやらなくても、いずれどこかの企業が、検索市場を代替します。そんなことになるくらいなら、自らが覇権を取るべきだと考えるのは、合理的だと思います。
「モデル崩壊」怪物が自らの排泄物を食べる未来

遅かれ早かれ、これまでと同じような検索体験は代替されます。
少なくとも情報検索(何かを知りたいという検索需要)については、完全に代替されるのに時間はかからないと思います。
しかし、ここでモデル崩壊というキーワードについて考えてみる必要があります。
Model collapse is a degenerative process affecting generations of learned generative models, in which the data they generate end up polluting the training set of the next generation. Being trained on polluted data, they then mis-perceive reality.
引用元:AI models collapse when trained on recursively generated data
モデル崩壊とは、学習を繰り返す中で、いずれAI自身が生成したものが次の世代のAIの学習に使われるようになり、学習を繰り返すごとに出力の質が劣化するという現象のことです。この劣化を繰り返すことで、最終的に現実を誤って認識するようになる可能性があるという点を指摘した論文です。
これは現時点でもすでに起きていることです。
生成AIの作る文章は、非ユニークです。AI自身は、何かを体験することができないからです。
論理的で計算も得意なので、結果をシミュレーションすることはできます。しかし、実際にその結果がどうなったかはわかりません。
私は以前、生成AIに教えてもらった通りに広告を配信したら、大損したことがあります。失敗したという経験は、私だけが経験できたユニークなものです。生成AIはこのユニークさを持っていません。
ネット上には今、非ユニークな記事が爆発的に増えています。そして、AIは自分が生み出したものを自分で食べています。
Googleはオーガニック検索を消すことができない

モデル崩壊を避けるためには、ゲームチェンジ的な解決策を見つけるか、記事を書く(餌を生み出す)ことに対するインセンティブを作るしかありません。
インセンティブの形は、例えば、引用リンクを目立たせ、CTRを上げる方法や、引用元になった際に、報酬が発生するような仕組みです。
記事内に広告を貼り、クリックされると報酬が発生するGoogleアドセンスのような仕組みですが、そのAI版のようなものです。
現実には、一つの回答であっても引用元は膨大な数になる、かつ1つ1つ把握するのは難しいので、配分設計が非常に難しいものになるはずです。
ただ、Googleはアトリビューションモデル(貢献度を割り当てるための手法)のプロ集団なので、その点は解決できるのではないかと思います。
確かに、これまでのように、記事を書いて、検索結果の上位に表示させて、クリックを待つという形は消えてなくなるかもしれません。
生成AIの引用元のなかで順位を上げるなど、AI検索的な側面が強くなるかもしれません。
しかし、環境が変わっても、
- 記事を書くこと
- ユニークな記事を書くこと
などは、これまで同様不変です。
結論:「SEOは終わらない」企業が今できること

生成AIやAI検索がインターネット上の情報を餌にしている限りは、記事を書くという行為は生き続けます。
そして、記事を書くインセンティブのために、引用があり、今はない何らかのアイデアが生まれる可能性もあります。
しかし、ただ記事を書けば良いという時代が終わったことは確かです。情報系キーワードのCTRが下がっているように、他の企業が書いているのと同じようなことを書いても、誰にも読まれません。
大事なのは、ユニークであること。企業なら、成功事例や失敗談などです。実際に試した人にしかわからないこと(一次情報)こそ、価値のある情報です。
AIが生み出す情報と、人間が生み出す情報は、「ノウハウはAI」「経験は人間」といったように、きっと棲み分けされていくはずです。
だから「もう記事を書いても意味がない」とは思わずに、あなたやあなたの企業だからこそ書けることを発信していきましょう。
